僕はエジプトのカイロの旧市街に生まれた。
生まれたときから僕の運命は決まっていたんだ。
お父さんのようにホテルの管理人になるっていう運命。まわりのみんなも僕が父の後を継ぐだろうと思っていたね。
僕が生まれたカイロの旧市街は、信心深いイスラム教徒がほとんどで、社会の規律(social norm)を守り、教義を誠実に守ることが善しとされていた、そんな世界だったんだ。
僕は大学でsocial workを専攻したんだけど、卒業後に待っていた仕事はどれも月収100ドルに満たないものだった。僕はここに来る前、近所の女の子と婚約した。近所の友達がみんなそうだったように。そのとき思ったね、たとえその仕事が十分に満足いくものでなくとも、結婚によって、働く目的(something to work toward)を持つことができると感じたんだ。
そのとき、僕はその後どういった人生を送ることになるのか、何となくわかってしまったんだ。
そんな折、こっちで働く友人に、「こっちで働いてみろよ、面白いぜ。」と誘われた。
僕にとってはまったく新しい世界だったけど、飛び込むことに迷いはなかった。
働き始めたときは大変だったよ。周りはインド人だらけ、アラブ人がいなくてカルチャーショックも
受けたし、友人とアラブ人が集まるたまり場に行ったなあ。
確かに仕事は大変だけど、ここはまったく違う世界。
イスラム教の国ではあるけれども、その信仰をどうやって実践(practice)するのかは、その人次第とされている。モスクも24時間空いているし、イスラム教の教義がベースとなっているから、僕みたいな人間がとてもフィットしやすいんだ。でも、カイロよりもっともっと自由がある。
アルコールも飲むし、娼婦だけどロシア人の彼女もいる。
ここではさまざまな機会があるし、未来がある。
きっと、ここはイスラム教の国のあるべき未来の姿なんじゃないかな。
一度、故郷のカイロに戻る機会があった。
友人はみんな僕に言ったよ、「君はお金を稼ぐようになって変ってしまった。」という風にね。
ひょっとしたら、ひがみもあるかもしれない。僕から見れば、彼らは今いる世界に足をとられて(stuck)、そこから動くことができていないのかな。ちなみに、前の婚約は破局したよ。
故郷を懐かしいとは思うけれども、やはり戻りたくないな。こっちの世界で僕は生きていくんだと思う。
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数日前に読んだ記事(*)を覚えている限りでざっくり物語風にしてみました。面白いのでお時間があれば是非原文を読んでみてください。上記で「こっち」というのはDubaiです。ちなみに、「エジプトのカイロの旧市街」には遊びに行ったことがありますが、カイロの市街地とは異なり、
ひっそりと人々が古いレンガの家で、チャイを飲みながら慎ましく暮らす、古き善き地域といった感じでした。
Dubaiという国が、古典的なイスラム教の国にとってどのようにインパクトがあるのか、それは古くからのイスラム教国の人しか語れないはずであり、その意味で興味深い記事です。でも、それと同時に、「エジプトのカイロの旧市街」と「ドバイ」を様々なコトバに置き換えることで、自分たちの周りの世界にも少なからず当てはめることができるのではないか、といった点で興味深いと思いましたー♪
(*)参照記事
A free-wheeling new Muslim culture grows in Dubai
(http://www.iht.com/articles/2008/09/22/mideast/dubai.php)
(おしまい)