心臓外科医のプロフェッショナリズム



ええ、またまたクリスマスらしくないエントリです。

好きなサイトに国連職員NOWというサイトがあります。

国連をはじめとする国際機関で活躍する日本人にスポットを当てた企画であり、別に国際機関で働きたいと思っていない人でも、是非見て欲しいサイトの一つです。

いわゆる典型的な「エリートコース」を歩んでいる方から、必ずしもそうといえない人まで様々な人をピックアップしていて面白いです。これだけの人たちが世界を少しでも良くしようと頑張って活躍している!というのは刺激になります。

そのことについても書きたいのですが、忘れられないのが平林国彦さん(国連児童基金=ユニセフ:東京事務所副代表)のコトバのこの部分(↓)です。



「心臓外科医の仕事を始め10年ほど経った頃、その後の人生の方向性について悩む時期がありました。まず、思ったことは、心臓手術はスーパードクターが行うべきだということでした。もし、わたしが手術して95%の成功率で、ほかに99%の成功率の医者がいれば、迷わず後者に手術してもらうべきであり、そこはプロフェッショナルとして妥協すべきでないと思いました。自分自身はベターではあったかもしれないけれど、ベストではないと思っていたのです。」


心臓外科については医龍などのマンガ(→ちなみに結構お気に入りのマンガです。)で知っている程度なのですが、特に気づいたのは、①心臓外科医が極めてプロフェッショナリズムが必要とされる職業だな、という点と、②平林さんがとてもプロフェッショナリズム溢れる人間だということです。


●まず、①(心臓外科医が極めてプロフェッショナリズムが必要とされる職業である点)について。

もちろん、どの職業にもプロフェッショナリズムは必要とされます。弁護士になったばかりの頃は特に、そして今でもなお求められるプロフェッショナリズムの高さには日々緊張し、冷や汗を流しながら仕事をしています。最初は、扱う案件が何百億円単位だったりすることもざらであり、また、会社が意思決定をするにあたって法律面で常に的確な「ファイナルアンサー」を出さなければならない、つまり逃げられないというプレッシャーにさらされているため、なんてリスクの高い仕事なんだ、と思ったのを今でも憶えています。

でも、心臓外科医のリスクと要求されるプロフェッショナリズムは質が違うと思いました。スーパードクター(しかも読む限り平林さんも極めて優秀と思われるのに、その人がスーパードクターといえる人)しか心臓手術を行うべきでないということであり、そのプロフェッショナリズムの高さはハンパないと思いました。もちろん、患者の生命を考えれば当然なのですが、これを考えると、法律家がどんなに間違えても人が即死することはないですし(*1)、その立場に立つだけでゾクっとします。

(*1)但し、やはり弁護士のミスで無罪になるべき人が有罪になったり、つぶれなくていい会社がつぶれたり、救済されるべき人が救済されなかったりするわけで、その意味でやはりリスクは高いと思うし、相当のプロフェッショナリズムをもって心して臨まないとキビシイと思います。その意味で、心臓外科医のそれと単純に優劣をつけたりするのは避けます。

●次に、②(平林さんがとてもプロフェッショナリズム溢れる人間であること)について。

心臓外科医として成功すればアメリカでは年収数億円を超えることも十分に可能と聞いたこともあります。いっぱしの心臓外科医になってもなお「あるべき心臓外科医」の姿と自分の姿を見比べて(すごく優秀なのにもかかわらず)「自分より優秀な人がいたらそのドクターにやってもらう」という点は、達観しているとさえ思われます。自分が手術をして経験を積んだ方が自分の価値も高まるし、それなりに優秀であれば自分に自信を持つものです。でも、そういた私利や目先のことにとらわれず職業倫理に従うことができる(*2)、おそらくこういう人こそ一流なんじゃないかな、と思いました。


もちろん、みんなが心臓外科医のプロフェッショナリズムをもって妥協しなかったら、ほとんどの人は働けなくなってしまうわけですが(笑)、少なくとも仕事に対する姿勢について示唆に富んでいると思います。

(*2)ちなみに、弁護士の場合、腕が悪いと客がこないだけで、別に人は死なないので、もっぱら公的目的のために働く医師とビジネスという側面を併せ持つ弁護士では違いがあります。ただ、それを差し引いても、上記の「真摯であること」は示唆に富んでいると思います。



「そこに人生の転機が訪れました。1994年1月のニューヨークタイムズに掲載された一枚の写真が私の人生を変えたのです。それは当時、内戦と飢饉に見舞われていたスーダンで小さな女の子が禿鷹に狙われているように見える写真でした。これは世界から大きな反響を呼び、ピューリッツァ賞も受賞したこのカメラマンは3か月後に自殺してしまいました。わたしはこの写真を見て、必ずしも自分は心臓外科医である必要はないと思いました。できれば、こういう子どもを助ける仕事がしたいと思ったのです。」



ちなみに、その後、平林さんは、↑のように考えキャリアを転換します。この転換の仕方も、自分のケースを考える上でとても参考になると思ったので、クリッピングの意味を込めて引用してみました。


(おしまい)
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by sipoftip | 2007-12-26 03:43 | キャリア/コトバ/ロールモデル


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