ネタ的には結構前に色々と議論されていたので,
時期に遅れた感が否めなくもないですが,メディアとコーポレートガバナンス,
ちょっと気になっていたので,書いてみました♪
1.アメリカでは少数株主による会社支配が可能らしい
実はちょっとびっくりした。
先日も紹介した
Google誕生 —ガレージで生まれたサーチ・モンスター
デビッド ヴァイス (著), マーク マルシード (著), 田村 理香 (翻訳)
によれば,グーグルの創業者である
サーゲイとラリーは,経営に対して強い支配力を持っている。
もちろん,2人のカリスマが企業文化の根幹まで
染み渡っているというのが一番の理由。だけど,
そんな彼らの影響力を構造的に担保しているのが,
彼らの保有する複数の議決権付の株式。
要するに,1つしか株式を持っていないのに,
いくつも議決権を持っているということ。
こういった構造は,例えば,Wall Street Journalで有名な
Daw Jones(今GEとピアソンに買収されるのか!?)
も,同じらしい。
(しょぼいが自宅からの夕焼けww)
2.ジャーナリズムの保護のための少数株主による会社支配
何故そんな支配形態が可能か????
同書によれば,報道が中立的な立場から行われることを担保する
ためらしい。いわゆるジャーナリズムの保護。
ただ,こうしたガバナンスのあり方には,投資家から批判の声が強いという
指摘もあるみたい。
愛読ブログ?の「ウォールストリート日記」にも面白い記事が。
http://wallstny.exblog.jp/4713287
WSJの経営にMS(モルガンスタンレー)が文句をつけたとのこと。
その理由は,勝手に自社ビル買ったり合理性に欠ける経済活動を
していないことに文句をつけたものの,投資額に
見合うコントロールが及ばない,というのがポイントのひとつ。
確かに,harryさんの指摘のとおり,ジャーナリズムの保護することと,
少数の創業者(?)によって複数議決権株式を持っていいことは必ずしも
関連しない。
また,特定の企業やファンドに一定数以上の株式を持たされると
当該株主に関するトピックについての報道が萎縮するという側面もあるかもしれない。
その意味で特定の者の影響力を断ち切る仕組みは必要だと思う。
でも,影響を断ち切るという目的のために少数の創業者等に
支配権を持たせていいかは,別問題。そもそも,特定の者による
影響を排除するために,一定の者の支配を認めること自体,
現に支配している創業者(?)達のスタンスが中立であるという前提に
立っていることにほかならないし。
だから,ジャーナリズムの保護という目的を達するのに
少数者による会社支配という手段は(少なくとも机上では)
関連性がなく,ロジックとして説得力に欠けると思う。
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確かに,大きなメディアが限られている状況では,特定の者による
影響があると困る。だけど,広く一般民が様々な情報に
アクセスし,選択できるようになれば,(市民に色々な選択肢があるという意味で)
情報に意見,偏見が混じるとしてもそれは数ある多くの立場のひとつに過ぎないから,
上記少数株主による会社支配も別にいいじゃん,ということになると思う。
つまり,理想像としては,誰(ファンドでも一定の企業でも)に支配されて
いたとしても,それはそういう色のかかった(少なくともその可能性のある)言論
であり,それは数ある主張,意見のうちのひとつに過ぎないじゃん,とみんなが思い,
それぞれが,色のついた情報を広く認識の上,思いおもいに情報を取捨選択の上
表現を受領し,発信できるインフラが整っているのであれば,
仮にメディアが誰に支配されようが体勢に影響はない。
これが民主主義の最も理想とするシステムじゃないかな。
この場合,規制は少なければ少ないほどいいことになる。
これはどんなにITや通信が進化しても,相当難しいと思う(*)けど,
忘れてはいけないポイント。
(*)みんなが自由にそれぞれの判断であらゆる情報を認識の上取捨選択できる
というステージに行く必要があるが,人間のキャパからすれば,
そこまで行けるか相当微妙な気がするため。。
(またタオ島,下も同じ♪)
3.「ジャーナリズムの保護」の目的を達するのに適当な手段????
(理論的には)仮にそれが日経であろうが,WSJであろうが,
創業者等の一定の支配層の色がかかった言論としてしか存在し得ず,
公的な報道機関という側面を強調しすぎるのは不適切と思う。
ただ,事実上,(崩れつつあるものの),報道機関が
コングロマリット化しているという側面からみれば,やはり,
そんな数少ないコングロマリット報道機関の報道内容が
株主によってちらほら変わる可能性が残る制度設計はそれはそれでまずいかもしれない。
以上は,「意見」「主張」の話。事実の報道については,
(その編集過程で意見,主張というバイアスがかかることを差し引いても)
やはり客観的な事実が伝達されなければ困ると思う。
この意味で,規制のかけ方はそんな単純でないんだろうな,と思うけど。
日本でどうやってこの辺が考えられているのか,おって検討かな。。
報道の自由,ジャーナリズムを考える場合,その報道の自由が
どこまで認められるか(日本の憲法のように全ての価値に中立的か,
ドイツ憲法がナチを排除するように,一定の価値観を前提とした色つきの
ものととらえるかなど)という点も制度設計に影響を及ぼしそうな気がする。
でも,考えれば考えるほど難しくなるトピックなので今回はこのくらいに。。
4.日本法では複数議決権株式は駄目
日本では,少なくとも公開会社にて複数議決権株式を発行することは
会社法上認められてないと解されている。
だから,日本では,法改正がない限り。上場会社で上記のグーグルやDaw Jones
のような裏技(?)は使えません。
それでは,何故アメリカと日本で違うのか?
米国法の素養がないため分かりません。
ただ,日本で複数議決権株式が認められてないのは,株主平等原則が働くから。
では,株主平等って?
多分米国にも株主平等原則はあるはずだけど,どこで何が違うのだろうか?
とても難しいので,今度また。
あと,報道といえば,最近気になった団体。
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「国境なき記者団」(こっきょうなききしゃだん、仏:Reporters sans frontieres(RSF)、
英:Reporters Without Borders(RWB))は、言論の自由(または報道の自由)の擁護を
目的とした、ジャーナリストによる国際的な非政府組織。1985年にパリで設立された。
世界中で拘禁や殺害されたジャーナリストの救出と、その家族を支援。そして各国の
メディア規制の動きを監視や警告をするのが主な活動である。 近年では、中国のYahoo!
とGoogleにインターネットの検閲をしないように要請したことがある。 また2002年以降、
『世界報道自由ランキング』(Worldwide press freedom index)を毎年発行している。
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こちらもテーマが大きいので今度また♪