特に深夜特急を読んでいたわけではなかった。
司法試験の論文を終わったのは7月下旬。
5月には新緑だったはずの柔らかな緑は気づいたらすっかり成長して濃く深い緑色になっていた。そんな木陰に立つと蝉の鳴き声が聞こえる。まさに勉強には向いていない季節(・・)。
論文試験に合格すると、第3次試験である口述試験を受けることになる。なので、「どっかに、ぱーっと旅行に行きたいなー」、とか思いつつも、一応、自習室に足を運び、淡々と準備をしていた。
淡々と。
そう、論文までは気の合う友人と2人で勉強していた。
試験は大変だったけど、奴と勉強してたから、結構わいわいやっていたのだが、彼は試験が終わるや否やぽーんと海外に行ってしまってのだ。
「いーなー・・」と8月の空をぼやーっと自習室から見ていたっけか。
たまに友人と会ったり、論文前の緊張感から解放された合格発表までの一時的な平和を純粋に味わっているうちに、8月も下旬になっちゃった。
そして、友人が帰ってきた。
タイ・インド・ネパールに行ったという。色々写真を見せてもらった。
わお!
それまでの海外経験は、1年間の交換留学@アメリカ、そのほかの旅行もアメリカ、シンガポール、サイパンとか香港とか、どっかしら「整った世界」。
ある意味で予測可能
はて、彼が見せてくれた写真には、そういった「整った枠組み」の前提を根本から
覆すシーンが次から次へと刻銘に記されていた。
新しいフェーズに入るときのエキサイトメントは何物にも代えがたい。
ずっと、そういった異文化に興味があったのに、うっかり司法試験の勉強を始めてしまい、
司法試験をはじめてからは他の事をやった場合のリスクが怖くて、あまり他の事をやっていない。ずっと心にしまっていた。
Backpacking
そのコトバは、当時の僕にとって、あらゆる未知のエキサイトメントを包含しているかのような
素敵な響きだった。
友人から勧められたのが「バックパッカーズ読本」。いい本だと思う。バックパッカー指南のような本で、これまで知らなかった旅行の世界が描かれていた。直感的にこれは自分が渇望していたものだなーと感じる。これから始まるであろう旅に心を躍らせずにはいられなかった。
そして、喫茶店でバイトをはじめ、少しずつお金をためはじめた。そして、9月の論文試験、10月の口述試験の合格を確認して、すぐに旅行の準備を手配して飛び立った。
一緒に合格した友人たちは、もう事務所を訪問するなど就職活動を開始したり、内定をもらった友人とかもいた。企業法務をやってみたいかも、と思っていた自分としては当然就職先候補として検討すべきだったのだろうけど、「旅行に行くことで出遅れちゃう」みたいな感覚は不思議とまったく気にならなかった。
飛び出すことが何にも代え難く自分が欲していることであり、また必要だと感じていたから。
そんなわけで、徒然にですが、ずいぶんと昔の旅行記をいまさら書こうと思い立ちました♪
気まぐれ更新の予定です(><)
(つづく)