カナダ人から日本の警察の取調に突っ込みを入れられた

先日の英会話の素材は

「Cops plan internal monitors of grillings」
(-Japan Times-Friday, Nov. 2, 2007)

ざっくりいうと,

①(背景)
虚偽の自白が強要されるなど,警察への信頼が揺らいでいた
②(対応)
そこで,捜査部門以外の部署の警察官が取調に同席させる,
取調の時間,時刻などをモニタリングする制度の準備をしている
③(課題)
日弁連等はさらに取調過程のビデオ撮影なども必要と主張している。

という内容。カナダ人の先生(仮名:トニー)からの素朴な疑問と
やりとり。

●「捜査部門以外の警察官」も警察官に過ぎない。例えば,弁護人の同席は駄目なのか?

→カナダでは弁護人が就くまで何も喋らない,弁護人から
 possible defenceを教示された後は,それに従ってひたすら
 弁解or沈黙するのが通常らしい。

 ちなみに,弁護人が取調室にいる被疑者との面会を求める,という
 形で争われたケースは結構あるも,弁護人が「同席」を求めた
 ケースはそれほど聞かない。何が根拠で弁護人が取調に「同席」する ことができないのか,よーく考えてみると,何故それが行われていな いのか?行われていないとして本当に禁止されていて争いようがない のか・・・・いまいち良く分からない(・・;)

●取調に対する日本人の態度,西洋人の態度

 自分が接見に行くと,「弁護士を頼めるなんて知りませんでした。」
 何て言われたこともある。

 きっと,これはカナダ人と日本人の司法に対するリテラシーの違いなのかな。

 昔,教官が言ってたストーリーに

 「西洋人は大概言い訳が上手い。あたかも自分がその犯罪をせざるを
 得なかったことを雄弁に語る。被疑者ながらその雄弁さには
 感心した。」

 なんてエピソードもあったのでトニーに話したら,

 「そうやって自己弁護するなんて当たり前のことだよ。」

 と言われた。勿論,日本人だって雄弁に自己弁護するだろうし,
 例えば,やっていないものはやってないと筋を通すため
 否認を貫く日本人も沢山いるので,上記は程度問題かも知れない。
 
 だけど,取り調べる方としては,そうやって雄弁に議論する
 被疑者の方が取り扱いにくい,というのはあるかもしれない(自分が
 取り調べる側だったらそうなので。)


●自白を取りに行く意義

 自白をとることは上記記事でもよく批判される。

 「ムリに自白を取りに行って冤罪を産んでいる。」と。

 自白の強要はよくない。そりゃ,虚偽の自白は良くないです。
 誰もこれは争わない。では何故自白が重視されるのか?
 反論を見てみよう。

 こんなことを言う検事さんがいた。

 「裁判所に起訴しないような程度の事件で否認している場合,
 結局その人の反省する場所がないじゃない。検察庁ってのは,
 その人が犯罪をやっていない場合には,裁判所に行く前に
 解放してあげる。そして,その人が犯罪をやっている場合には,
 ちゃんとその場で反省させる,ってことが重要だよ」

 (特に日本人を前提とした場合)頷ける人も多いのでは?
 同じ人を起訴せずに社会に帰す場合,

 「実際に犯罪やったし,証拠的にもアウトだったけど,
 何とかのらりくらり反省しなかったぜ」

 という人と,

 「検察官から指摘されて,被害者の気持ち,自分がこんなことを
 したと知った親の気持ちになって,ちゃんともう一度考えてみた」

 という人で,次に犯罪を行う確率は変わってくるかもしれない,
 そういう考え(信念)に基づいて自白を取りに行っているケースは結 構あると思います。
 
 もっとも,ちょっと脅したところで,ちゃんと証拠を突きつけないで
 自白をさせることは,相当難しいです。

 証拠もないのに自白をとれるなんて極めて稀。それは

 「なしわり」

 (=証拠が「なし」なのに,自白がとれる(=割れる))
 と呼ばれ,普通の検察官にはそうそう出来るものではないようです。

●自白が重視されるもう一つの理由

 こういうことを言う検事さんもいた。

 「日本の刑法は主観的要件が多い。これが改正されたら
 取調の透明化のための改革だってスムーズにいくだろうに。」
 
 つまり,「薬物を吸引するつもりで」所持する,とか
 「人をだますつもりで」取引をする,とか。

 その立証を固めるには,自白が重要な役割を占めるとのこと。
 証拠法的に,英米法の方が,主観要素の立証が楽なんだとか。

 確かにそうかも。検察実務でも客観証拠を重視する
 というスタンスが基本になっているし。

●取調の透明化への対立ポイント

 取調手続が透明化されることがいいというのは間違いない。
 だけど,議論が宙に浮かないようにするには,

 「何がそれを妨げているか」

 というところにスポットを当てることが王道でしょう。
 
 検察が本来立証できることのハードルをいたずらに
 上げると,本来の治安維持や犯罪の取り締まりに支障が 
 出る可能性もある。
 
 多分ココが対立ポイント。

 理論上は適正手続は憲法上の問題だし推し進めるべし!
 といっても,なかなかそうもいかない。

 他方,検察の主張も厳しいものがある。
 だって,取調の透明化と治安悪化の因果関係を証明
 するのはとっても難しいから。

 おそらく他の国のケースとかを参照しつつこの辺りの
 議論を組み立てるのでしょうが,なかなか定量的な
 議論がしにくいのでしょう。

 んー締まりが悪いが,今日はこの辺で。
 

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by sipoftip | 2007-11-06 03:25 | 英語


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