↓見ました♪
手紙 プレミアム版
賛否両論あるようですが,沢尻エリカが相当可愛かったことを
差し引いたとしても,かなり良かったと思います。
【以下,ネタバレがあるので,見る予定の人は注意!】
●若干の突っ込み
①会長が直貴に対して「君も差別を受け入れて,逃げないで,そこで生きなければならない」と諭す場面について
この台詞について,私は差別されない場所に逃げられるのであれば,
それもあり得る選択肢だと思います。差別はやはり辛いので,
会長のような思考では生き方を限定することになりかねません。
なお,私が東野さんだったら,会長に上記発言をさせる際に,会長を
リウマチなどの疾病を持つキャラクターにします。会長が歩いていく
後ろ姿でびっこひかせるとか。
だって,主人公と同じハンデとは言わないまでも,ハンディキャップから逃げずに
戦っている人が上記台詞を言うのは,全然説得力があると思うから。
②兄貴の犯罪について
・まず,弟の学費に困る→犯罪,というステップがあまりに早いと思う。
映画では弟と精神的な絆のある兄貴というキャラであり,兄貴は
憎まれキャラにはなっていません。でも,そのキャラを説得的に
根付かせるためには,やはり何故兄貴が犯罪をしてしまったのか?
その部分が知りたいですね(時間の都合でカットしたんだろうけど。)。
弟の学費に困った人は数多くいるけれど,だからといってみんな犯罪者に
なるわけではない,そこにはもう一つのステップがあるはず。そのステップを
理解しないと兄貴のキャラクターの本質的な部分は見えてこないはずなので。
ちなみに,兄貴を取り調べるとしたら,ココがポイントになるはずです。
③直貴が倉庫にとばされたことについて
・この行為は違法な可能性もあると思います。
親戚に犯罪歴があるという理由での異動であり,上司も明言してたので,
勝てたかも??俺がついてればー,とか思ってみたり(苦笑)。
・ちなみに,法律的には,親戚に犯罪者がいることの告知義務があるか
という点も一応論点にはなるかもです。調べてませんが,多分ないんじゃないかな?
●ちょっと昔を思い出した
殺人者の兄を持つことで差別を受ける直貴。
確かに,うまくいきそうなときに,自分じゃコントロールできないことによって
次々と失敗する。それを宿命のように抱えてしまった直貴の本当の辛さは,
自分には分からないかも知れない。
また,刑事事件を代理人の目で見ることはあっても,本当に被害者の気持ちになれるのか,
被告人の家族の気持ちになれるのか,それはとても難しいし,実際には
不可能だと思う。
そういった類の強い感情に(擬似的にであっても)触れることで,
日常に忙殺される自分を省みることもできた気がする。
普通の人の普通の生活の中に内在する問題は,ビジネスや法律とかとは
比べものにならない複雑さを備えている。刑事事件をめぐる人間模様の複雑さや
単に机の上だけじゃ片づかない世界のリアルがある。
殺人犯を兄に持つ人はさほど多くないにせよ,どんな人も大なり小なり同じ構造の問題を
抱えているんじゃないでしょうか。
他人から不当に差別されたり,自分がコントロールできない部分で希望が叶わなかったり。
細かな日常にこそ難しく,かつ人間らしいテーマが沢山ある。
刑事事件を数多く見た修習生時代に感じた気持ち,最近は仕事に忙殺されて忘れ気味だったのですが,
久々に戻ってきました。それは結構エキサイティング♪
●構成
確かに,ストーリーとしては,予定調和かもしれません。
だけど,「手紙」をモチーフに展開されるストーリーの構成は純粋に綺麗だと思いました。
手紙は,最初,兄弟を精神的につなげる役割を果たす反面,
その役割が増すにつれて,弟の現実の生活に与える影響も大きくなる。
手紙には,そんな兄弟をつなげ,そして,傷つける二面性がある。
ストーりーが進むにつれて,
・沢尻が直貴になりすまして兄に宛てた手紙
・沢尻が会長に宛てた手紙
・剛志が被害者に宛てた手紙
と様々な「手紙」が登場し,手紙を通じて,色々な形でストーリーが展開していく。
社会には,いろいろな人がいて,色々な形でつながっている。
そして,いろいろな人がいる分だけ,いろいろな気持ちがあって,それが
ぶつかったり,共鳴したり,反発したり。
いろいろな作用がある。
そういった,いろいろな登場人物の気持ちのつながりを象徴するモチーフとして
「手紙」があるのかも。
ストーリーの展開を,そんな「手紙」を軸に絞ったことで,枠組みとしては
シンプルにまとまっていると思う。そのシンプルな一つの枠組みに「手紙」
の中に込められたさまざまな複雑な気持ちを入れ込むことで,全体として
いい作品になっているのではないか。
エセ国語の教師みたいなコメントだけど,素直にそう思いました。
と以上のようにコメントしてみたものの,映画を見てすぐの方がストレートな
気持ちで書けたかも。次回はそうしよっと。